少し前のことになるが、日本文学研究で知られる米コロンビア大名誉教授のドナルド・キーンさん(88歳)が日本に永住する意思を固め、日本に帰化する手続きを始めたという。東日本大震災で大変心を痛め、被災者との連帯を示すために永住への思いが固くなったようだ。
キーンさんと言えば、日本文学史を著わし、小西甚一など日本の国文学者の対抗心を大いに煽ったが、その日本文学に対する切り口には思わず唸ってしまうものがある。
たとえば俳句。破調の句を「どれだけ俳句の詩形に耐えられるか試している」と神の試練に比してその意義を認めているのは大変斬新な発想だし、また、日本の詩についても「あまりにも容易に韻を踏んでしまうのでありがたくもないし、踏みたくなくても踏んでしまうので、韻を踏んだだけでは散文との区別がつかない」と日本人の詩人、文学者が韻を踏むのに四苦八苦しているのを尻目に、日本の詩はその音節の長さとそのリズムによると、西洋的な詩=韻の考えを一蹴している。
そんなキーンさんが日本人のことを評して、
「家族に不幸があっても、泣いたりせず、自分の本当の気持ちを隠して人に接するのが日本人。一方、米国人は、ワーッと話す(笑)。以前、ハワイ出身の力士が負けたとき、とても悲しそうな顔をしたが、日本の力士は、表情を見せない。外国人が日本で暮らすと、日本人は、なぜ悲しいのに笑うのかと驚く。今回の震災でも、米国人は、日本人の落ち着きぶりに驚いた。素晴らしい、と。今ほど親日感情が高まっているときはない。わたしの友人で、特に日本に関心がない人でも、大震災の話をする。(いろいろな話が出るが)誰からも、一度も日本の悪口を聞いたことがない。」
と褒めている。
逆に、日本の最大の欠点は何でしょう?と聞かれて、「極端から極端に走るところだろうか。バブルのころは、ロックフェラーセンターからドイツのお城まで、(日系企業が)ほうぼうで土地などを買ったが、(中略)、(バブルがはじけると)今度は逆に、『もう日本はだめだ。外国は、みんな中国に興味がある』となってしまう。(中略)。日本では、ジャパン・バッシングからジャパン・パッシング(日本外し)など、誰かが言い出すと、みんなそれにならってしまう。」
との答え。
キーンさんの帰化は日本及び日本人を再考してみる良い機会かも知れない。


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