「ぞうさん」  (湘南ゆうき村・植村  裕)

梅雨に入り鬱陶しい天気が続き、TVや新聞のニュースでは先の見えない政局や悲しい事故の報道ばかりで、気持ちが滅入ってしまう。こんな時に好きな音楽を聴いたり、体を動かしたりして気分転換を図るのだが、最近は「まど・みちお」の詩作品が私にとって特効薬となっている。

 まど・みちおは百歳を超える詩人で「ぞうさん」「やぎさんゆうびん」「一ねんせいになったら」など数多くの童謡で知られている。谷川俊太郎に、「こんなにやさしい言葉で、こんなに少ない言葉でこんなに深いこと書く詩人は、世界で、まどさんただ一人だ。」と言わしめている。シンプルであるがその奥深さが魅力である。

 

ぞうさん ぞうさん おはながながいのね

そうよ かあさんも ながいのよ

 

 象は鼻が長いのが特徴である。それを異形視すれば軽蔑や差別につながるのであるが、子象は大好きなかあさんと同じで誇らしげである。

 象であること、自分であることがうれしいのである。まどは「人間だってそうで、肌の色や髪の色が違うから、いい。同じ日本人でも十人十色、百人百色で、一人ひとり顔や考え方が違っているのに決まって

るし、だからこそ価値がある。お互いに補い合い、助けあうこともできる。」と語る。やさしく、短いことばなのに、これほど深く広がりをもつ詩に驚嘆を覚える。

 最後に私の好きな「リンゴ」という詩をご紹介したい。

 

リンゴを ひとつ

ここに おくと

 

リンゴの

この 大きさは

この リンゴだけで

いっぱいだ

 

リンゴが ひとつ

ここに ある

ほかには

なんにも ない

 

ああ ここで

あることと

ないことが

まぶしいように

ぴったりだ

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