ご紹介『司馬遼太郎と詩歌句を歩く』(サービスセンターぱる・小林 博)

「小林君は、時代小説なんか読むかなあ?」
新海均君が聞いてきた。
「まあ、多少はね」
「司馬遼太郎は?」
「ああ、司馬遼は好きだよ」
「じゃあ、この本どうかな?」
新海君が紙袋から1冊の本を取り出して、表紙を見せてくれる。
新海均著『司馬遼太郎と詩歌句を歩く』とある。
「新しく出した本なんだ」
「おお、そうか。それじゃ、買わせてもらうよ」

新海均君は、大学の教養部の時代、2年間同じクラスで過ごした同級生である。このクラスの仲間とは、ずっと音信不通だったのだが、数年前からクラス会を開くようになって付き合いが復活した。私は昨年初めて参加し、新海君とも40数年ぶりに再会したのだった。今年も先日このクラス会があった。新海君の新著を手にしたのは、そのクラス会の二次会の席に向かう途中だった。並んで歩く新海君がぶら下げている紙袋をのぞくとまだ、4~5冊本が残っている。私は少し遅れてクラス会に参加したので、他のクラスメートが何冊買い求めたかは知らないが、とにかく新海君はクラス会で自著を宣伝しようと紙袋にたくさん詰めて持ってきているのだった。本を出版するのは、結構大変なことなんだなあと、ちょっと同情的な気分にもなったのだが、それ以上に同級生が立派な著書を上梓したことに誇らしさを感じた。

▼新海均著『司馬遼太郎と詩歌句を歩く』

新海著.JPG

クラス会からの帰りの電車で早速『司馬遼太郎と詩歌句を歩く』を開いて読み始めると、これが実に面白い。
「司馬遼太郎は詩人になりたかったのかもしれない。」という一行でこの本は始まる。え、そうか、詩人・司馬遼太郎か。新海君の視点の斬新さに驚き、内容に引き込まれて行く。司馬遼太郎は膨大な作品を残したが、そのどれにも主人公や関連人物の詩や短歌や俳句が数多く引用されている。司馬作品に表れたこうした膨大な詩歌句を著者は丁寧に追いかけ、読み解いていく。それは各作品の粗筋と読みどころの紹介にもなっていて、司馬作品のダイジェスト一覧としても楽しめる。各章のタイトルを以下に掲げる。タイトルの右側に各作品の主人公の名前を書き加えておいた。第一章は土方歳三を取り上げているが、第二章以降は、時代順に人名が並んでいることが分かるだろう。読み進んでいくと、自ずと日本の通史を追っていく章立てになっているのである。

 

第一章 『燃えよ剣』にみる俳句の旅・・・土方歳三
第二章 『空海の風景』と漢詩の旅・・・空海
第三章 『義経』と和歌、今様の旅・・・源義経
第四章 『箱根の坂』の中世歌謡・・・北条早雲
第五章 『国盗り物語』、その謡と連歌・・・斎藤道三、織田信長、明智光秀
第六章 『馬上少年過ぐ』の詩歌・・・伊達政宗
第七章  芭蕉をめぐる旅・・・松尾芭蕉
第八章  蕪村を愛して・・・与謝蕪村
第九章 『世に棲む日々』の革命と詩・・・吉田松陰、高杉晋作
第十章 『竜馬がゆく』にみる詩歌・・・坂本竜馬
第十一章 『酔って候』の酒と詩・・・山内容堂
第十二章 『幕末』、志士たちの詩歌・・・幕末の志士たち
第十三章 『峠』の中の詩歌句・・・河井継之助
第十四章 『坂の上の雲』の子規の俳句・短歌革新・・・正岡子規、秋山好古、秋山真之

 

新海均著『司馬遼太郎と詩歌句を歩く』を頼りに司馬遼太郎の名作を読み返せば、さらに日本史をたどり直してみることにもなる。同級生に思わぬ読書の楽しみをもらえたのは、なにより嬉しいことである。

 

 

 

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