日記

マニュアルと支援

ファーストフードチェーン店で時折驚くことがある。"いらっしゃいませ、ようこそ○○へ!"。注文が終わると"只今キャンペーン中です。△△はいかがでしょうか!"と早口な高音がまくしたてる。高齢者は高音が聞き取りにくい。いわゆる"感音性難聴"。年を重ね次第に耳が遠くなるのはこれ。年代で言葉の違いがあるためさらに聞き取れない。だが、話し手は疑う様子もなく一層聞き取りにくい。まじめな高齢者が"はぁ~?"。すると嫌そうな顔で繰り返す。"聞き取れなかったんだ~"の感情はない。だから繰り返し"はぁ~"となる。高齢者は困り果てているが、店員はマニュアルを果したとばかりにやり過ごす。誰もが次第に高齢者の仲間入りをする。当事者からすれば分りにくいものは分りにくい

 また店員の声。"ただいまキャンペーン中です。△△はいかがでしょうか!"。相手が見えない。中腰で見ると買い物客は幼児。"えぇ~!幼児に!?"と思うが、店員は当然の顔。親はいないかと辺りを見回すが判らない。困った顔の幼児と店員。どうして相手によって推し測れないの...

 学生を相手にしていると、時々、答えがひとつにならないと極端に不安な人がいる。"答"はひとつでないといけないらしい。なぜ答えはひとつか...と考え、小学校からず~っと答えはひとつだったことに気づいた。偏差値教育という言葉が出始めた頃から、学校では答えはひとつだった。だから、自分の考えや見解を聞かれても、先生が求める正解を考え話す。そう育った人がマニュアル=答えを教えられたら、そこに一直線に向かう。だから、聞こえの悪い高齢者も、意味が判らない幼児も決められた答=マニュアルの言葉を並べる。

 障害福祉の"支援"は"自己決定"を尊重すると学ぶ。また、自己決定が難しい人たちの意思を何とか理解、尊重しようと心がける。それが"自己決定支援"。自己とは"自分自身"。相手の意思を尊重しなければ"自己"を"尊重"した"支援"にはならない。つまり、その人に応じようとする。その人におうじる時は"答え"ではなく"応え""応え"は、その人の意思、考え方、好き嫌いだから、人それぞれ。つまり、自己決定支援とは、"人それぞれ"=支援者の思い通りにはならない...と知ること

一方、マニュアルは多くの人に合わせて作る。個人的感情や個人的趣向は含みにくい。だから、対人援助のマニュアルは最低限度の仕事であってベストではない。マニュアル通りでは"自己決定支援"は望めない。

だから障害福祉サービスでマニュアルを作る意味は、支援の質をこれ以上下げない基準に過ぎない。そこで支援の質を上げるためには"その時、その人"にあった支援を、その人と共に作り出さなければ出来ない。"ヘルパーに資格はいらない。育児経験と常識があればいい..."と聞いたことがある。「育児経験」とは意思表示の弱い赤ん坊を"みる"ことのできる"心=感性"、「常識」とは社会的な平均値で推し測る"心=感性"。だからマニュアルが全てだと思わない方がいい。最低の支援でしかない。(2019‐7②)