日記

"私には夢がある!"~あけましておめでとうございます~

 1964年、キング牧師は「I have a dream」と黒人差別撤廃を訴え、路線バスに乗らない「モンゴメリー・バス・ボイコット事件」の中心にいた。非暴力の社会運動。1863年、リンカーンの奴隷解放宣言から100年後の出来事。"差別"とはこれほど長い時間が経過してもなくならない。1960年代、日本で障害者の当事者運動が始まった。"命を選別するな!"と訴えた青い芝の会神奈川支部の横田弘氏は、1977年、路線バスを止め"バスに乗せろ!"と訴えた。「川崎バスジャック事件」。その後も継続し今の"交通バリアフリー"を築いた。

 その頃、知的障害児の親たちは"学校に通わせたい"を旗印に全国組織を立ち上げた。「全国知的障害者手をつなぐ育成会」。神奈川県では1956年にスタートし1970年に組織化され、ノーマライゼーション、インテグレーションの推進役だった。その頃「藤沢市手をつなぐ親の会」は、インテグレーションの先を見てインクルージョンを目指した。だから、学校に通うことで終らず、卒業後の場として"地域作業所「星の村作業所」"を創設。そのために多くの親たちの努力と、昨年亡くなった法人の恩人西條節子さんの尽力、そして私財を投じた恩人黒崎義介先生の支えがあった。地域生活を前提に「社会福祉法人藤沢育成会」を創設したが、既存の事業に満足せずグループホーム(当時:生活ホーム)やヘルパー派遣事業に乗り出した。今では当たり前だが、これが様々な事業の先駆けだ。制度は、当事者目線ではなく社会的目線で考えられていたから親たちの運動が今日の制度形成にどれだけ意味を持つかがよく判る。それが"インクルージョンふじさわ"だけでなく、"それぞれのマイライフ"を掲げる(福)藤沢育成会の考え方に表れている。社会的な視点だけでなく個人的な視点に立ったアプローチを両立させなければ出来ないことを知っていたのだ。

 しかし、時代は移ろい、ソーシャルアクション(社会活動)≒「集団」が社会を動かす時代から、ひとり一人を大切にする≒「個人」を尊重する時代になり結集しにくくなった。自治会活動、労働組合などを見れば判る。だから単純に社会運動組織を考えても難しい。だが、奴隷解放宣言からキング牧師の「バス・ボイコット運動」まで100年。社会の"当たり前"はそれほど簡単に改まらない。障害当事者運動が始まった頃、福祉関係者はほんの一握り。しかも篤志家、善意の人が社会の認識。その時代、社会に問えたのは当事者だけだったが、今はさまざまな専門職がそれぞれの領域で活動する。その専門性の"質"はどうかかと問えばまだまだの感は否めないが、少なくても"これで良いのか!?"と問える人は多くなった。その一握りでも"このままで良いか...""当たり前と何が違うか..."と社会に問う"姿"を見せたい。社会に本来の"姿"を問い続けることこそ社会福祉の本当の姿だろう。当事者運動が難しいから出来ないのではなく、当事者を代弁する人たちが運動を起こす時代ではないか。今のままで良いかを検証しなければ何も変わらない。本当にそれで良いか...。"バス"と言う社会生活上の"必需品"を素材に始まった時と同じパワー、智恵、実行力が欲しい。元旦に改めて「I have a dream」。だから、同じ考えを持つ人々が増え、継続的に一貫した新たな道を模索することが夢。だって横田弘氏のバスジャック事件からまだ半世紀でしかないから。 本年もどうぞよろしくお願いします。(2023.1)