日記
~あのね~(相談支援プラザ 課長 一戸香織)
先日、実家に帰省した際のことです。
ふと引き出しの中を整理していたら、懐かしいノートが見つかりました。
表紙には「あのね」と書かれていました。
それは、小学2年生の頃に担任の先生と続けていた交換日記でした。
ページをめくると、当時の自分が毎日の出来事を一生懸命に言葉にしている姿が蘇ってきました。
学校であった楽しいことや少し悲しかったこと、家族とのちょっとした会話まで素直な気持ちで綴られていました。
思い出してみると、毎朝先生が教室に来ると、私は「あのね先生」と声をかけていました。クラスのみんなも話したいことがたくさんあり、自然と先生の周りには人だかりができていました。
そんなある日、先生が「話したいことがあれば、ノートに書いてごらん」と言ってくれたことをきっかけに、交換日記が始まりました。
私だけでなく、クラスのみんなも先生と日記を交わすようになり、それぞれが思い思いのことを書いていました。
日記には、「おばあちゃんがお菓子をもらってきて、あゆみと食べました」といった内容もありました。おばあちゃんは、老人会などの集まりに出かけると、お菓子を食べずに家に持ち帰り、私や妹たちに分けてくれました。
明治時代に生まれたおばあちゃんの優しさと心遣いは、今でも私の心に深く残っています。
おばあちゃんが忘れ物を持ってきてくれたときのことも書かれていました。
「おばあちゃんが忘れ物を持ってきてくれました。うれしかったです」と記されていました。
足が悪いのに一生懸命に歩いて、そっと下駄箱に入れてくれてありました。
おばあちゃんの歩く姿は今でも鮮明に心に残っています。
言葉にするのが難しかったことも、ノートには素直に書けたように思います。
先生は、どんな日も返事を書いてくれていました。
たとえ短い言葉でも「ちゃんと読んでくれている」と伝わる温かいひとことが書いてありました。
今、大人になって振り返ると、あの頃の自分はとても正直でした。
感じたことをそのまま言葉にして、飾り気のない素直な気持ちを書いていたのです。
しかし、大人になると、言いたいことをそのまま伝えることが難しくなってきました。空気を読んだり、言葉を選んだり、本音を飲み込むことも増えました。
誰でも「聞いてほしい」と思う気持ちを持ち続けているのかもしれません。
「聞いてもらえた」と感じられるだけで、心が少し軽くなることもあります。
あの頃の素直さを思い出させてくれた日記。
日記は、私にとって大切な宝物となりました。
この記事を書いた人

お米の産地で生まれ育ち、ご飯が大好き!おにぎりでお米の違いが分かります。微妙な力加減で、ふっくらとしたおにぎりを作れる事が密かな自慢。
具は大好きな梅干し!
