日記

湘南だいちの施設長・課長日記

「創造する意欲につなげる!」   (湘南だいち 課長 石川大助)

湘南だいち

2月17日に湘南台文化センター市民シアターでチャリティーコンサートが開催された。ありがたいことに400人以上の方々が来場され、終盤では来場された皆さんがステージに上がって音楽に合わせて踊る時間があり、私も一緒にステージ上で同じ時間を共有した。楽しそうに踊ったり、一生懸命に体を動かしている姿に嬉しさを感じる時間だった。

私が配属されている湘南だいちには、見える形で自分を表現したものが施設内に展示されている。1階では、ちぎり絵、貼り絵、機織りで作られた色とりどりの作品が飾ってあり、丁寧に色紙を貼った絵、不規則な色の羅列が展開された貼り絵、規則正しさ満載の機織り作品、それぞれ楽しさと真面目さが詰った作品や描いた絵を冊子にして作品集になっている物もある。2階には、3月の季節を感じる"おだいりさまとおひなさま"を大きな画用紙にみんなで仕上げた絵が飾ってある。遠目で見ても色鮮やかな絵だが、近寄ってみると何ともかわいい絵になっている。一生懸命に力を込めて塗ったクレヨンの痕跡!電車?好きな物を想像して描いた形?の何か、、、。ダイナミックに引いた線、端っこに小さく描いたごにょごにょした塊(笑)が描かれた絵が展示してある。それぞれの嬉しいや楽しいが凝縮された絵になっている。

言葉として発声はされないが、その人の内側にある思考を表現する方法の一つとして"造る"という行為は必要だと思っている。造っている間、自分の世界に没頭し自分の内側の思考に浸ることができる。また、その人を理解する一つの方法にもなるからだ。この行為をするには、造る行為が保証された物的環境と表現を理解して後押しする人的環境の両面がそろうことが必要だ。この環境が維持されることで、「また造りたい」という意欲につながる。その兆しを消えないように支援していかねば。

「施設から地域へ」 (湘南ゆうき村・湘南だいち 施設長 妹尾貢)

湘南だいち
湘南ゆうき村

 前回のこの施設長日記で、報酬改定に向けての議論について少し紹介しましたが、2月6日に改定の概要がとりまとめられました。

 障害者総合支援法については施行以来3年に一度の見直しを行ってきましたが、今回は医療・介護とのトリプル改定ということもあり、これまでで一番大きな変更になっていると思います。

 今回の改訂のいくつかの重点項目のうち、一番にあがっている「障がい者が希望する地域生活を実現する地域づくり」について、引用して紹介したいと思います。

※詳細をご覧になりたい方は、ここにリンクを貼りますのでご覧ください。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37772.html

(以下、障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」から引用)

  • 障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり

  • 障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実

○障害者の入所施設や病院からの地域移行を進め、障害者がどの地域においても安心して地域生活を送れるよう、地域生活支援拠点等の整備の推進、グループホームにおける一人暮らし等の希望の実現、支援の実態に応じた適切な評価の実施、障害の重度化や障害者の高齢化などの地域ニーズへの対応等を行う。

○障害者が希望する生活を実現するために重要な役割を担う相談支援について質の向上や提供体制の整備を図るとともに、障害者本人の意思を尊重し、選択の機会を確保するため、意思決定支援を推進する。

○特別な支援を必要とする強度行動障害を有する障害者等への支援体制の充実を図る。

(中略)

(1)施設入所支援

①基本報酬の定員区分の見直し

・利用定員の変更を行いやすくし、施設から地域への移行を推進するため、利用定員ごとの基本報酬を10人ごとに設定する。

②地域移行を推進するための取組の推進

すべての入所者に対して、地域移行及び施設外の日中サービス利用の意向を確認し、希望に応じたサービス利用にしなければならないことを運営基準に規定する

・本人の希望に応じたサービス利用に実効性を持たせるため、

➢ 地域移行及び施設外の日中サービス利用の意向確認を行う担当者を選任すること

意向確認のマニュアルを作成すること

を運営基準に規定する。当該規定については、令和6年度から努力義務化し、令和8年度から義務化するとともに、未対応の場合は、減算の対象とする。

・地域移行に向けた動機付け支援として、グループホーム等の見学や食事利用、地域活動への参加等を行った場合を評価するための加算を創設する。

③ 地域移行の実績の評価

・障害者支援施設から地域へ移行した者がいる場合であって、入所定員を1名以上減らした場合を評価するための加算を創設する。

(引用ここまで)

 私が藤沢育成会で働き始めた1998年は湘南あおぞらがスタートした年でもありますが、当時からすでに、入所施設という住まいのあり方については議論があり、その後、長野県や宮城県などでは県立のコロニーの解体が議論されました。神奈川県では他県でコロニーと呼ばれるような大型の入所施設はありませんでしたが、津久井やまゆり園の事件をきっかけに、神奈川県が2023年4月「当事者目線の障害福祉推進条例」を制定しました。

随分と長い時間がかかりましたが、やっと制度上に「どこでどんな風に暮らしたいのか、本人に聞く」ということが、定められたことになります。

 この4月からはこの制度に基づいてサービスを提供していくことになりますが、仕組みができたとしても、実際の動きを伴わなければ、それは絵に描いた餅になってしまいます。

 利用者ひとり一人がしっかりとした情報や経験をもとに自分の生き方を選べるような支援をできるよう、我々支援者のちからがこれまで以上に問われていると感じます。

 ※写真は、先月法事で乗ったスーパーはくと

妹尾

「日常の反復と増殖」(湘南だいち 石川大助)

湘南だいち

 ついこの間まで夏日が続いて暑かった気がするが、あっという間に朝晩の気温も下がり冬に近づいてきたと実感する日々だ。暑さの方が好きな私には厳しい季節がきてしまった。しかし寒くなってくると空気の透明度が高く、富士山がきれいに見えるのは好みだ。

 

 今の季節の秋と言えば「食欲の秋」「紅葉の秋」「スポーツの秋」等をイメージする方も多いと思うが、私の秋のアンテナは「芸術の秋」が立っている。そのおかげで、色々な場所で展覧会や音楽祭の案内が目に入ってくることが多く、ふと「アート」ってなんだ?と考えてしまい調べてみるとアートの定義とは次のようだった。

『表現者や表現物によって、鑑賞した人が精神的・感情的に変動する作品や活動』

 また、人の気持ちや心を動かす作品すべて、絵画や彫刻のような目に見える物だけではなく、音楽などもアートに分類されると書かれていた。

 鑑賞した人の心が揺さぶられる作品や活動がアートの定義ならば、人それぞれの感じ方があってよく、特別な展示会でしか見れない作品も劇団などの大舞台も、小さな画廊の展示会も公民館の一室で行われる落語も当てはまる。自身のアンテナのチャンネルを変えるだけで、当たり前に見えていたものが「作品」に変わる可能性がある。

 利用者の描いた点描画、作業でできたアルミの塊、ペットボトルキャップの反復した並び、誰かが折った紙のハートを壁に繰り返し貼っていく活動もアートに変貌した。アートは特別な場所でしか目にしないものではなく、日常の小さな反復の行為に埋もれている。一つ二つ、、、百、千、万と増殖させ形を成すことで、見る側は圧倒され立ちすくむかもしれない、怒りだすかもしれない、涙するかもしれない。日常にあった反復の行為は増殖することで心を揺さぶるアートに変貌する。時間がかかるが確実に種はある。まずは、そんなアートの種を見つける仲間を増殖させたいと思っている。

 写真は、私が住んでいる近くの夕焼けの揺れるススキがメインの風景です。

3年に一度(湘南ゆうき村・湘南だいち 妹尾貢)

湘南だいち
湘南ゆうき村

 2024年度(令和6年度)は、3年に一度の報酬改定が予定されています。今回は、障害福祉以外にも、診療報酬と介護報酬との同時改定ということで、議論が活発化しています。

 論点の軸はいくつかありますが、物価高騰対策と、従業者の他業種との収入格差の是正について、ニュースなどでよく取り上げられるので、目にされた方もおられると思います。

 世間ではあまり話題にはならないけれど、注目している論点があります。それは「入所施設からの地域移行推進」です。これは、「インクルージョンふじさわ」の実現のためにも、とても大切な論点であると思います。理想の実現には、理念だけでなく現実の制度が大変重要です。

 今回の論点は、以前からさまざまに議論されてきたことですが、施設入所支援に関する制度変更は、これまで軽微なものが多く、ここまで踏み込んだものは、ほとんどなかったと思います。

 もしかすると、国連障がい者権利委員会が20229月に日本政府に対しておこなった障がい者施策に関する勧告の影響もあるのでしょうか。これは日本の障がい者政策が「パターナリスティック」であるという指摘を行ったものです。

パターナリズム(父権主義)に関しては、91日理事長日記参照

 107日付け福祉新聞の記事には、

 「厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、夜間に障害者をケアする「施設入所支援」の定員別の報酬設定を10人刻みにする方針を固めた。入所者がグループホーム(GH)やアパートなどに移行した後、空いた分の定員を減らすよう誘導したい考えだ。

~中略~

 厚労省は26年度末の施設入所者数を22年度末比で5%以上減らすよう都道府県に促している。地域移行だけでなく施設定員の削減も進める考えで、24年度の報酬改定は、これに関連した改定事項が多くなりそうだ。」とあります。

 10人刻みの報酬体系で、本当に定員が減っていくのか、もう少し刻みが細かくないと難しいようにも感じますが、方向性としては分かり易いと感じます。

 また、116日付け福祉新聞には、

 「厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、障害者支援施設で暮らす人が昼間に施設外の通所事業所で暮らすことを促す方針だ。施設外の通所事業所を見学した場合の加算を設けるほか、施設外の事業所に通う場合は、その通所先が得る送迎加算の対象とする。施設から地域生活への移行を進める動機付けにしたい考えだ。

~中略~

 厚労省の調べでは、施設外の事業所に通う入所者がいる施設は全体の25%。施設外に通う障害者はおおむね9人に1人にとどまるという。」

とあります。

 藤沢育成会の2つの入所施設は、以前から外部生活介護への通所を積極的に進めてきました。上記の記事を見ると、全国的には職住分離の割合は意外に低いようです。

 制度の変更は、現実の動きが先にあり、それをみながら制度がそれを後押しするように動いていくので、現実の動きがやっとここまで来た、ということなのだと思います。

 変化が起きるときには、先行きに不安を感じる部分もありますが、この動きが市民の生活の充実にむけて動いていく大きな流れになればと思います。

 今後も議論の方向性を注視しながら、きたる報酬改定に備えていこうと思います。

「メダカ効果!」(湘南だいち 石川大助)

湘南だいち

めだかの学校は多くの方が知っている耳馴染みの童謡だ。

めだかのがっこうはかわのなか
そっとのぞいて みてごらん
そっとのぞいて みてごらん
みんなで おゆうぎしているよ

なぜメダカの話をしているかというと、湘南だいちでは事務所でメダカを飼っているので、メダカつながりで何となく思いだした。歌詞の「そっと」や「ごらん」という言葉遣いも誰に話しかけている?など色々と想像させる。さらに何十年経っても忘れない歌詞だ。

今は2匹のメダカが水槽の中で泳いでいる。

毎日誰かが、「いるかな~」とのぞき込んでは餌をあげているし、稚魚が増えたこともある。いつの間にか餌やりや水替えなども行う生き物係になっている職員も出てきた。

「○○先生メダカ見せて~」とぷれっじの園児がメダカを見に来ることも多くなり、その時は、事務所にいる職員が水槽を見やすい場所に動かして「ここにいるよ」「どこどこ?見えない」なんて会話で、しばし時間を忘れて園児とメダカを見つけようと楽しげな職員もいる。

外からガラス越しにメダカを見つけて「メダカかわいいね~」と窓を開けて直に見ようとする成人の利用者。「かわいいね~」「いたいた!こっちのメダカ太ってるけど、こっちのメダカは痩せてるね」「これは何?」と指さしては、これまでしたこともないメダカの話に、職員との会話が弾んでいることもある。

メダカに興味を示す人は増え、必然と飼い方や餌、環境などの疑問が湧き知っている人に話しかけては、「へえ~そうなんだ」と知るきっかけになったり。お互いに新たな一面を垣間見ては笑いに繋がって場が和んだりも。メダカの会話から分かったのだが、意外にもメダカを飼っている職員が結構いることにも驚いた。

小さい動きの愛らしさがよいのか生き物効果はすごい!

ちなみに、「めだかの学校」はNHKから依頼された作者が、荻窪用水の周辺でした幼い息子との会話がきっかけで歌詞が生まれたそうだ。とはいっても、楽曲について始終アンテナを立てていたからこそ、会話の中でピンときたのではないか。私も普段から広く興味のアンテナを張っておかねば、、、。

夏祭り(湘南ゆうき村・湘南だいち 妹尾貢)

湘南だいち
湘南ゆうき村

 先日、湘南だいちの夏まつりを開催しました。

 その数日前から、熱中症アラートが発令されるくらい暑かったので当日の天候が心配でしたが、幸運なことに異常な高温にはならず、風もあったので屋外でも過ごすことができました。

 昨年度までは、感染防止のため事業ごと別々な日に分かれて行い、普段のメンバー以外と交わる機会はほとんどなかったのですが、今回はだいち全体のお祭りとして行い、コロナ流行期間中にぷれっじを卒園された方やそのご家族にも声をかけさせてもらったので、大勢の方が集まり、お神輿担ぎやカラオケ大会、ダンスチームのパフォーマンスなど、大変盛り上がりました。

 特に「 POWER IN DA PERFORMANCE(パワーインダパフォーマンス)」(クリックするとリンク先にとびます)の皆さんのダンスは、演者とお客さん入り乱れて、大盛況でした。

 暑い中の準備はスタッフも大変でしたが、皆さんに楽しんでいただけたようで何よりでした。

 なによりうれしかったのは、利用者ご家族同士でお話をする方や、卒園以来久しぶりにあった子供たち、保護者方などが談笑している姿があちらこちらで見られたことでした。

「酷暑」と言われるような気候になってしまった近年の日本の夏ですが、お祭りを実施する意味について考えるには良い機会になりました。

 古来から、地域が共同体としての意義を確認し、遊びを通して協力体制を作っていくプロセスにお祭りは欠かせないものだったでしょう。「インクルージョンふじさわ」の日常を作るために、お祭りという「非日常」を作り出すこともまた我々の大切な仕事のように思います。

 来年度にむけては、徐々に地域の皆様にも参加してもらえるよう、準備をしていこうと思います。

※お祭りの様子は、後日アップされるスタッフ日記をご覧ください。

写真は、油壷の磯です。マリンパークがなくなっても、海には人が集まっていました。