日記
湘南だいちの施設長・課長日記
「日常の反復と増殖」(湘南だいち 石川大助)
ついこの間まで夏日が続いて暑かった気がするが、あっという間に朝晩の気温も下がり冬に近づいてきたと実感する日々だ。暑さの方が好きな私には厳しい季節がきてしまった。しかし寒くなってくると空気の透明度が高く、富士山がきれいに見えるのは好みだ。
今の季節の秋と言えば「食欲の秋」「紅葉の秋」「スポーツの秋」等をイメージする方も多いと思うが、私の秋のアンテナは「芸術の秋」が立っている。そのおかげで、色々な場所で展覧会や音楽祭の案内が目に入ってくることが多く、ふと「アート」ってなんだ?と考えてしまい調べてみるとアートの定義とは次のようだった。
『表現者や表現物によって、鑑賞した人が精神的・感情的に変動する作品や活動』
また、人の気持ちや心を動かす作品すべて、絵画や彫刻のような目に見える物だけではなく、音楽などもアートに分類されると書かれていた。
鑑賞した人の心が揺さぶられる作品や活動がアートの定義ならば、人それぞれの感じ方があってよく、特別な展示会でしか見れない作品も劇団などの大舞台も、小さな画廊の展示会も公民館の一室で行われる落語も当てはまる。自身のアンテナのチャンネルを変えるだけで、当たり前に見えていたものが「作品」に変わる可能性がある。
利用者の描いた点描画、作業でできたアルミの塊、ペットボトルキャップの反復した並び、誰かが折った紙のハートを壁に繰り返し貼っていく活動もアートに変貌した。アートは特別な場所でしか目にしないものではなく、日常の小さな反復の行為に埋もれている。一つ二つ、、、百、千、万と増殖させ形を成すことで、見る側は圧倒され立ちすくむかもしれない、怒りだすかもしれない、涙するかもしれない。日常にあった反復の行為は増殖することで心を揺さぶるアートに変貌する。時間がかかるが確実に種はある。まずは、そんなアートの種を見つける仲間を増殖させたいと思っている。
写真は、私が住んでいる近くの夕焼けの揺れるススキがメインの風景です。
3年に一度(湘南ゆうき村・湘南だいち 妹尾貢)
2024年度(令和6年度)は、3年に一度の報酬改定が予定されています。今回は、障害福祉以外にも、診療報酬と介護報酬との同時改定ということで、議論が活発化しています。
論点の軸はいくつかありますが、物価高騰対策と、従業者の他業種との収入格差の是正について、ニュースなどでよく取り上げられるので、目にされた方もおられると思います。
世間ではあまり話題にはならないけれど、注目している論点があります。それは「入所施設からの地域移行推進」です。これは、「インクルージョンふじさわ」の実現のためにも、とても大切な論点であると思います。理想の実現には、理念だけでなく現実の制度が大変重要です。
今回の論点は、以前からさまざまに議論されてきたことですが、施設入所支援に関する制度変更は、これまで軽微なものが多く、ここまで踏み込んだものは、ほとんどなかったと思います。
もしかすると、国連障がい者権利委員会が2022年9月に日本政府に対しておこなった障がい者施策に関する勧告の影響もあるのでしょうか。これは日本の障がい者政策が「パターナリスティック」であるという指摘を行ったものです。
※パターナリズム(父権主義)に関しては、9月1日理事長日記参照
10月7日付け福祉新聞の記事には、
「厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、夜間に障害者をケアする「施設入所支援」の定員別の報酬設定を10人刻みにする方針を固めた。入所者がグループホーム(GH)やアパートなどに移行した後、空いた分の定員を減らすよう誘導したい考えだ。
~中略~
厚労省は26年度末の施設入所者数を22年度末比で5%以上減らすよう都道府県に促している。地域移行だけでなく施設定員の削減も進める考えで、24年度の報酬改定は、これに関連した改定事項が多くなりそうだ。」とあります。
10人刻みの報酬体系で、本当に定員が減っていくのか、もう少し刻みが細かくないと難しいようにも感じますが、方向性としては分かり易いと感じます。
また、11月6日付け福祉新聞には、
「厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、障害者支援施設で暮らす人が昼間に施設外の通所事業所で暮らすことを促す方針だ。施設外の通所事業所を見学した場合の加算を設けるほか、施設外の事業所に通う場合は、その通所先が得る送迎加算の対象とする。施設から地域生活への移行を進める動機付けにしたい考えだ。
~中略~
厚労省の調べでは、施設外の事業所に通う入所者がいる施設は全体の25%。施設外に通う障害者はおおむね9人に1人にとどまるという。」
とあります。
藤沢育成会の2つの入所施設は、以前から外部生活介護への通所を積極的に進めてきました。上記の記事を見ると、全国的には職住分離の割合は意外に低いようです。
制度の変更は、現実の動きが先にあり、それをみながら制度がそれを後押しするように動いていくので、現実の動きがやっとここまで来た、ということなのだと思います。
変化が起きるときには、先行きに不安を感じる部分もありますが、この動きが市民の生活の充実にむけて動いていく大きな流れになればと思います。
今後も議論の方向性を注視しながら、きたる報酬改定に備えていこうと思います。
「メダカ効果!」(湘南だいち 石川大助)
めだかの学校は多くの方が知っている耳馴染みの童謡だ。
めだかのがっこうはかわのなか
そっとのぞいて みてごらん
そっとのぞいて みてごらん
みんなで おゆうぎしているよ
なぜメダカの話をしているかというと、湘南だいちでは事務所でメダカを飼っているので、メダカつながりで何となく思いだした。歌詞の「そっと」や「ごらん」という言葉遣いも誰に話しかけている?など色々と想像させる。さらに何十年経っても忘れない歌詞だ。
今は2匹のメダカが水槽の中で泳いでいる。
毎日誰かが、「いるかな~」とのぞき込んでは餌をあげているし、稚魚が増えたこともある。いつの間にか餌やりや水替えなども行う生き物係になっている職員も出てきた。
「○○先生メダカ見せて~」とぷれっじの園児がメダカを見に来ることも多くなり、その時は、事務所にいる職員が水槽を見やすい場所に動かして「ここにいるよ」「どこどこ?見えない」なんて会話で、しばし時間を忘れて園児とメダカを見つけようと楽しげな職員もいる。
外からガラス越しにメダカを見つけて「メダカかわいいね~」と窓を開けて直に見ようとする成人の利用者。「かわいいね~」「いたいた!こっちのメダカ太ってるけど、こっちのメダカは痩せてるね」「これは何?」と指さしては、これまでしたこともないメダカの話に、職員との会話が弾んでいることもある。
メダカに興味を示す人は増え、必然と飼い方や餌、環境などの疑問が湧き知っている人に話しかけては、「へえ~そうなんだ」と知るきっかけになったり。お互いに新たな一面を垣間見ては笑いに繋がって場が和んだりも。メダカの会話から分かったのだが、意外にもメダカを飼っている職員が結構いることにも驚いた。
小さい動きの愛らしさがよいのか生き物効果はすごい!
ちなみに、「めだかの学校」はNHKから依頼された作者が、荻窪用水の周辺でした幼い息子との会話がきっかけで歌詞が生まれたそうだ。とはいっても、楽曲について始終アンテナを立てていたからこそ、会話の中でピンときたのではないか。私も普段から広く興味のアンテナを張っておかねば、、、。
夏祭り(湘南ゆうき村・湘南だいち 妹尾貢)
先日、湘南だいちの夏まつりを開催しました。
その数日前から、熱中症アラートが発令されるくらい暑かったので当日の天候が心配でしたが、幸運なことに異常な高温にはならず、風もあったので屋外でも過ごすことができました。
昨年度までは、感染防止のため事業ごと別々な日に分かれて行い、普段のメンバー以外と交わる機会はほとんどなかったのですが、今回はだいち全体のお祭りとして行い、コロナ流行期間中にぷれっじを卒園された方やそのご家族にも声をかけさせてもらったので、大勢の方が集まり、お神輿担ぎやカラオケ大会、ダンスチームのパフォーマンスなど、大変盛り上がりました。
特に「 POWER IN DA PERFORMANCE(パワーインダパフォーマンス)」(クリックするとリンク先にとびます)の皆さんのダンスは、演者とお客さん入り乱れて、大盛況でした。
暑い中の準備はスタッフも大変でしたが、皆さんに楽しんでいただけたようで何よりでした。
なによりうれしかったのは、利用者ご家族同士でお話をする方や、卒園以来久しぶりにあった子供たち、保護者方などが談笑している姿があちらこちらで見られたことでした。
「酷暑」と言われるような気候になってしまった近年の日本の夏ですが、お祭りを実施する意味について考えるには良い機会になりました。
古来から、地域が共同体としての意義を確認し、遊びを通して協力体制を作っていくプロセスにお祭りは欠かせないものだったでしょう。「インクルージョンふじさわ」の日常を作るために、お祭りという「非日常」を作り出すこともまた我々の大切な仕事のように思います。
来年度にむけては、徐々に地域の皆様にも参加してもらえるよう、準備をしていこうと思います。
※お祭りの様子は、後日アップされるスタッフ日記をご覧ください。
写真は、油壷の磯です。マリンパークがなくなっても、海には人が集まっていました。
「伝わるもの」 (湘南だいち 課長/石川 大助)
先日、知人から展示会の案内が送られてきたので見に行ってきました。
『ハンデのある方の現代アート 気づきの時展―さいかい』
立体、平面など200点以上の大きさも色合い違った個性あふれる作品ばかりが展示されていました。会場内は、何とも言えない明るい雰囲気が漂っていて、順に見ていくのがワクワクしてしまう作品ばかりで、何より一つ一つの作品から作家それぞれの「一生懸命に取り組む姿勢」と「これが好き!!」という気持ちが伝わってきて心を揺れ動かされました。
アクリル絵の具で描かれた動物、色合い豊かな線が重なり合った線画、段ボールとセロテープで形作った電車、日付が入った日記のような線画の束、薄紙を何枚も重ねて作った猫・犬・兎、一枚の紙を切り抜いて立体にした動物、軽いタッチで描かれた風景画、鉛筆で描かれた人の描写、瓶を描いた静物画、思うままに筆を動かし瞬間を閉じ込めた文字、端まで丁寧に作られた陶器。
人の気持ちそのものは目に見えないですが、筆の運び、細部へのこだわり、色合い、くねくねの線の重なり、セロテープの重ね具合、束ねられた紙の枚数、、、それらの過程を経た造形物には作家の思いが蓄積されていました。
どれだけの「これが好き!!」の思いが積み重ねられてきたのだろう、、、。
これを描こうかなと思ったのは何でだろう、、、。
描き始めはどこからだろう、、、。
なんでこの色になったのだろう、、、。
どんな表情で描いているのだろう、、、。
どうなったらこれで完成!となるのだろう、、、。
思いをはせると、作っている過程を見てみたくなってしまいました。
この展示会の題名の通り、「気づきの時」になりました。
目に見えない気持ちを考えることは、支援の現場でも同じことが言えます。仕草や行動、目線など行動に現れる気持ちは瞬間に流れてしまい、造形物のように手に取って上から下から眺めることはできませんが、皆で考え気づいたことを伝えあいながら一人ひとりの気持ちを知っていきたいですね。
写真は湘南だいち2階のぷれっじテラスで撮った夕方の景色です。
「生活支援の専門性を支える」 (湘南ゆうき村・湘南だいち 施設長/妹尾 貢)
12月に入って一気に寒くなりました。
今年度も半分が終わり、来年度に向けての準備期間に入っています。
今回は、法人で実施している研修を少し紹介させていただきます。
藤沢育成会が行っている研修は大きく分けて2種類、①一般向け研修と②職員向け研修があります。
- 一般向け研修(神奈川県から指定・委託を受けて実施)
・サービスセンターぱるが主に担当
「知的障害者ガイドヘルパー養成研修」:年2回
「行動援護従業者養成研修」年2回
・湘南ゆうき村・湘南だいちが主に担当
「強度行動障害支援者養成(基礎)研修」年3回
「強度行動障害支援者養成(実践)研修」年2回
「行動障害の予防的支援のための研修」年2回
があります。
これら研修は、法人の職員以外も参加できるので、他法人の同業の方たちと一緒に学ぶよい機会になっています。これら研修を通して、藤沢市や神奈川県の支援力の向上に貢献できればと考えています。
また、今年度からあらたに、強行研修のプレ研修的な位置付けで「行動障害の予防的支援のための研修」を、神奈川県から受託して実施しました。「予防」の言葉が示す通り、行動障害などの二次的な障害を生じないためには、支援する人たちが連携して、適切な支援を届けることが重要です。未就学~学齢期の支援者の連携のため、福祉と教育の垣根を超えた共通認識のために、今研修は、障害福祉の従事者に加えて、学校教員も受講していただけるような設定にしました。
実施してみると反響が大きかったので、当初の想定から規模拡大し、それぞれ約100名の参加がありました。
- 法人内職員向け研修は、法人全体研修、等級別研修、専門研修(必修・選択)資格取得研修、圏外派遣研修などがあり、私が担当している法人研修委員会は、主に専門研修(選択)の企画を担当しています。
今年度の選択専門研修は、これまでに、
・「地域共生社会に向けた取り組み」6月2日
・「家族の想い」7月7日
・「行動障害の予防的支援のための研修」7月26日、8月24日
・「行動障害の予防のための意思決定支援研修」8月31日
・「法人実践報告会」10月22日
・「地域生活推進検討会」11月29日
を実施し、このあと、1月と3月に専門研修を予定しています。
支援の現場を持ちながら、研修を受講したり、それを企画・運営したりすることは、それなりの労力を伴いますが、勉強することで仕事の質が上がり、それによって利用者やそのご家族の生活に貢献でき、喜んでもらえれば、それはまた、仕事へのモチベーションにもつながります。
研修を企画運営することは、実は受講する人以上に、自分の勉強になると感じています。内容を分かっていないと、他者に伝えることができないからです。
社会福祉・障害福祉の専門性は、生活に密着している分だけ幅がひろく、ちょっとわかりにくい部分もありますが、実は奥深く、知れば知るほど興味深いです。
職員もそれ以外の人も、面白く学んでいけるような研修になるように、法人全体で取り組んでいます。
(写真は、11月6日に、六会地区総合防災訓練に参加したときの様子です)