日記

湘南だいちの施設長・課長日記

「里帰り」(湘南ゆうき村・湘南だいち 施設長 妹尾 貢)

湘南だいち
湘南ゆうき村

 お正月は実家のある練馬に帰省しました。

 実家は団地なのですが、この5年ほどの間に建て替えがあり、実家の場所も数年ごとに変わりました。今回は元の場所の新しい建物への帰省でしたが、自分が子ども時代を過ごした時の様子とは似ても似つかない、おニューな感じのマンション風になっていました。

 それでも場所が同じなので、帰った感じがするのは不思議です。

 障害福祉の世界では「地域の生活」「地域移行」など、地域という言葉をよく使います。地域って何だろうとよく考えます。すぐに思いつくのは「施設の反対語」なのですが、では「施設」の生活と「地域」の生活の質的な違いとは、なんだろうかと考えます。

 自分が実家にいたころ、地域の活動を意識することは、あまりありませんでした。今思えば、団地の自治会で、階段掃除の日があったり、夏のお祭りがあったりしました。目の前が学校だったので、学校のイベントはよく行きました。

 働き始めてからは藤沢に住みましたが、仕事ばかりで、地域の活動に参加することはほとんどありませんでした。一度、たまたま夏に帰省した時に夏まつりがあって、屋台で焼き鳥を焼いたことがあったくらいです。

 ITの発展で、人と人をつなぐ仕組みは加速度的に変化して、端末さえあれば、足を運んだり人を介したりせずに、世界中の人とつながったり、いろいろなことが出来るようになりました。地元に帰らなくても、あちこちに散らばって住んでいる高校の同級生たちと、LINEで無駄話をすることもできます。 

 そうやって空間を超えてつながるようになっても、同じ土地にすむ「地縁」の関係もまた、続いていきます。

 最近は、職場がある西俣野上町内会の住民活動におじゃますることがあります。自分の生まれ育った地域ではありませんが、住んでいる人たちのいろいろな課題を見聞きすると、なにか自分たちにできることはないか、と考えます。

 そんな経験を通して、「人が役割をもって、直接にやり取りする距離感」それが地域かと考えました。施設に住んでいても、住民としての役割があれば、それは地域の暮らし、なのかもしれません。

 その場所で暮らしたり働いたりする人として、役割をもつこと、役割があると実感すること、それを支援することが我々の仕事なのではないか、とあらためて思いました。

※写真は、子どものころ遊んだ近所の公園

『無理せず急がず、何事も計画的に!』(湘南だいち 課長 大澤健二)

湘南だいち

課長日記の機会がやっと廻ってきた!と、思うと何を書こうか決められず。

この数年考えている事を今回は書くことにした。

私は長野で生まれ、横浜で育ち暮らしている。

長野に築20年くらいになる、別荘のような使い方をしている家がある。

3ヵ月に1回程度、長野へ行き家事をおこなっている。庭いじりや部屋の整理、修繕に家具の買い替えなど。

将来はこの家を有効活用できればと考え、準備をコツコツと少しずつ進めている。

無理せず急がない事で、計画的に楽しく準備が進み何時でも暮らし始める事ができるまでになっている。

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無理して急いで突発的に行動してきた私が、仕事から学んだ「無理せず急がず計画的に進めていく」が、活かされているのだと感じている。仕事が暮らしに役立ち、暮らしが仕事に役立つのだと改めて思えた。

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「湘南だいちの10年、湘南ゆうき村の30年」(湘南だいち・湘南ゆうき村 施設長 妹尾 貢)

湘南だいち
湘南ゆうき村

 先日、湘南だいちの秋祭りが開催され、大勢の皆さんにお越しいただきました。地域の皆様にもご協力いただき、無事に終了することができました。昨年まで、夏祭りという名称で7月後半の炎天下で実施してきましたが、近年の異常な暑さで、もはやお祭りどころではなく、今年度からは9月末に実施時期を変更したのですが、それでも当日は35度近い気温まで上がり、涼しい場所を探しながら参加されていました。

 また、今年度は江の島片瀬漁協のマルシェの実行委員の方や、西俣野下自治会の役員の方にもご参加いただき、盛り上げていただきました。

 今年度は湘南だいち設立から10周年、湘南ゆうき村はもうすぐ30年ということもあり、これまでを振り返ることが多くあります。これまで自分が配属になった事業所やそこでの利用者や職員のことを、いろいろと思い出します。

 一緒に働いた職員の中には、現在は別な職場に変わった人もいますが、みなさんそれぞれの現場で活躍されています。行政の職員になった方や、別の業界で活躍されている人もいます。

 サービスを提供する側から、福祉制度を作る側の仕事に変わった方もいましたが、このような人たちと一緒に仕事ができたおかげで、福祉のサービスというものが、どうやって充実・発展していくのか、ということを知ることができました。

 

 法人内に限らず、この仕事のプロフェッショナルだな、と思う人との出会いがたくさんありましたが、その共通点は、瞬発力と持久力の両方を兼ね備えていること、そして、いつも現状に満足することなく、アンテナをはって勉強し、日々進化しているということです。

 

 そのような人たちと一緒に働けていることは自分の財産であると同時に、障害福祉を支える様々な部門に仲間がいるという安心感にもつながっています。

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 10月26日(土) 「湘南ゆうき村 収穫祭」を開催いたします。ぜひ、ご来場ください。

 

※トップ画像はゆうき村がある西俣野の田んぼです。湘南だいちの秋祭りが行われたころ、地域の皆さんは稲刈りで大忙しでした。稲を刈った後に飛び出してくる生き物を狙っているのか、トンビが急降下を繰り返していました)

『感じ考えさせられ』(湘南だいち 課長 大澤 健二)

湘南だいち

 元日の夕方、能登半島を震源とした大きな地震があった事は誰もが記憶されているでしょう。まず、被災された方々、被災地域の一日も早い復興をお祈り申し上げます。


 私が施設長・課長日記の原稿を挙げたのはちょうどこの後だった。素直に、このタイミングで日記を書くのは心から嫌だな。と思った事を覚えている。

能登半島の災害からちょうど1カ月がたった2月、能登半島へ知り合いの人と共にボランティアとして入った。

高岡市から入り、氷見市を抜け七尾市の田鶴浜へ。田鶴浜での活動を終え、穴水を通り輪島市へ。半島を北上する中、各都道府県から派遣されている緊急車両や医療関係の車列、全壊、半壊した家屋は半島を北上するにつれ増えていった。

道路は上下にずれ亀裂もあり、至る場所で修復工事をしている。工事車両は岐阜や長野、新潟、京都と近隣県が多い。

輪島に入ると、全壊家屋が路地をふさいでいる場所も多く、来た道を戻る事を続けながら市内中心部へ向かう。正月を迎える装飾や掲示物が2月でもそのままで、非日常を感じた。

住民もほとんど見かけることはなく、復旧のために働く人の姿ばかりが目に入る。

街も人も、日常を失った景色だった。

大きな災害として、南海トラフを震源とした大地震が懸念される今、日常が非日常と変わった時、障がい福祉に従事する私たちは何ができるのであろうか。環境の変化に敏感な福祉サービスを利用する人たちへ、人・物・生活が非日常となった時、どれだけサポートができるのであろうか。そう感じ考えさせられた時間だった。

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「創造する意欲につなげる!」   (湘南だいち 課長 石川大助)

湘南だいち

2月17日に湘南台文化センター市民シアターでチャリティーコンサートが開催された。ありがたいことに400人以上の方々が来場され、終盤では来場された皆さんがステージに上がって音楽に合わせて踊る時間があり、私も一緒にステージ上で同じ時間を共有した。楽しそうに踊ったり、一生懸命に体を動かしている姿に嬉しさを感じる時間だった。

私が配属されている湘南だいちには、見える形で自分を表現したものが施設内に展示されている。1階では、ちぎり絵、貼り絵、機織りで作られた色とりどりの作品が飾ってあり、丁寧に色紙を貼った絵、不規則な色の羅列が展開された貼り絵、規則正しさ満載の機織り作品、それぞれ楽しさと真面目さが詰った作品や描いた絵を冊子にして作品集になっている物もある。2階には、3月の季節を感じる"おだいりさまとおひなさま"を大きな画用紙にみんなで仕上げた絵が飾ってある。遠目で見ても色鮮やかな絵だが、近寄ってみると何ともかわいい絵になっている。一生懸命に力を込めて塗ったクレヨンの痕跡!電車?好きな物を想像して描いた形?の何か、、、。ダイナミックに引いた線、端っこに小さく描いたごにょごにょした塊(笑)が描かれた絵が展示してある。それぞれの嬉しいや楽しいが凝縮された絵になっている。

言葉として発声はされないが、その人の内側にある思考を表現する方法の一つとして"造る"という行為は必要だと思っている。造っている間、自分の世界に没頭し自分の内側の思考に浸ることができる。また、その人を理解する一つの方法にもなるからだ。この行為をするには、造る行為が保証された物的環境と表現を理解して後押しする人的環境の両面がそろうことが必要だ。この環境が維持されることで、「また造りたい」という意欲につながる。その兆しを消えないように支援していかねば。

「施設から地域へ」 (湘南ゆうき村・湘南だいち 施設長 妹尾貢)

湘南だいち
湘南ゆうき村

 前回のこの施設長日記で、報酬改定に向けての議論について少し紹介しましたが、2月6日に改定の概要がとりまとめられました。

 障害者総合支援法については施行以来3年に一度の見直しを行ってきましたが、今回は医療・介護とのトリプル改定ということもあり、これまでで一番大きな変更になっていると思います。

 今回の改訂のいくつかの重点項目のうち、一番にあがっている「障がい者が希望する地域生活を実現する地域づくり」について、引用して紹介したいと思います。

※詳細をご覧になりたい方は、ここにリンクを貼りますのでご覧ください。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37772.html

(以下、障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」から引用)

  • 障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり

  • 障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実

○障害者の入所施設や病院からの地域移行を進め、障害者がどの地域においても安心して地域生活を送れるよう、地域生活支援拠点等の整備の推進、グループホームにおける一人暮らし等の希望の実現、支援の実態に応じた適切な評価の実施、障害の重度化や障害者の高齢化などの地域ニーズへの対応等を行う。

○障害者が希望する生活を実現するために重要な役割を担う相談支援について質の向上や提供体制の整備を図るとともに、障害者本人の意思を尊重し、選択の機会を確保するため、意思決定支援を推進する。

○特別な支援を必要とする強度行動障害を有する障害者等への支援体制の充実を図る。

(中略)

(1)施設入所支援

①基本報酬の定員区分の見直し

・利用定員の変更を行いやすくし、施設から地域への移行を推進するため、利用定員ごとの基本報酬を10人ごとに設定する。

②地域移行を推進するための取組の推進

すべての入所者に対して、地域移行及び施設外の日中サービス利用の意向を確認し、希望に応じたサービス利用にしなければならないことを運営基準に規定する

・本人の希望に応じたサービス利用に実効性を持たせるため、

➢ 地域移行及び施設外の日中サービス利用の意向確認を行う担当者を選任すること

意向確認のマニュアルを作成すること

を運営基準に規定する。当該規定については、令和6年度から努力義務化し、令和8年度から義務化するとともに、未対応の場合は、減算の対象とする。

・地域移行に向けた動機付け支援として、グループホーム等の見学や食事利用、地域活動への参加等を行った場合を評価するための加算を創設する。

③ 地域移行の実績の評価

・障害者支援施設から地域へ移行した者がいる場合であって、入所定員を1名以上減らした場合を評価するための加算を創設する。

(引用ここまで)

 私が藤沢育成会で働き始めた1998年は湘南あおぞらがスタートした年でもありますが、当時からすでに、入所施設という住まいのあり方については議論があり、その後、長野県や宮城県などでは県立のコロニーの解体が議論されました。神奈川県では他県でコロニーと呼ばれるような大型の入所施設はありませんでしたが、津久井やまゆり園の事件をきっかけに、神奈川県が2023年4月「当事者目線の障害福祉推進条例」を制定しました。

随分と長い時間がかかりましたが、やっと制度上に「どこでどんな風に暮らしたいのか、本人に聞く」ということが、定められたことになります。

 この4月からはこの制度に基づいてサービスを提供していくことになりますが、仕組みができたとしても、実際の動きを伴わなければ、それは絵に描いた餅になってしまいます。

 利用者ひとり一人がしっかりとした情報や経験をもとに自分の生き方を選べるような支援をできるよう、我々支援者のちからがこれまで以上に問われていると感じます。

 ※写真は、先月法事で乗ったスーパーはくと

妹尾